井上光晴式文章上達法
リライト 2019-03-27(水) 11:59:39
作家の井上光晴(1926-1992)は、短期間で「思想はともかくものを書く表現力は別人」となる文章上達方を紹介している。
2019-01-21 作家になるには 野原一夫編著 ぺりかん社 P61
どんなノートでもいいから、三冊用意するんです。一冊目のノートには、朝から晩までのことを書く。たとえば朝何時に起きて、歯ブラシは何を使って、どういう歯磨き粉で磨いて、顔を洗って、どういう食事をして、といった具合に毎日の動きを全部書くんです。過不足なく。考えなくていいんです。いちいち推敲なんかしなくていいから書いていく。片側のページはあけておきます。
二冊目は、自分が朝から晩まで考えたことを二行でも三行でもいいから書く、やはり反対側のページはあけておく。
三冊目は架空のことを書く。(中略)やはり片側のページはあけておく。
これを1ヶ月くらい書いて、二ヶ月目にはこれを見ながら、やや整理して反対側の白いページに書く。ないしは整理しながらつけ加えたりして書く。(後略)
行動ノート 思考ノート 架空ノート
百聞は一見にしかずだ。下の段にあるのは、井上氏の教えを守り抜いて書いた行動ノートの抜粋である。あえてタイトルをつければ「府中試験場に原付免許を取りにいく」となろう。公開するつもりで書いたものではないから、個人情報を特定される恐れもあって、ちょっと面白いかも知れぬが全部読まなくても結構である。ただ、量に注目してほしい。「書くことがない」の真逆のことが起こっている。
ならば思考ノートの抜粋も公開しなければ参考資料としての全体の価値が下がるのではないか とは言うものの、普段は本当ろくなことを考えてないよ。読むだけで不快な自演厨が繰り広げる創作がお好みなら別だけど。まあ、日々の考えたことを正直に綴る営みなど そういうものだと思っていただきたい。公開はちょっと無理かな。
架空ノートだが、架空の話などをいきなり考えろと言われても、かろうじてひねり出した宇宙人襲来だの、いきなり大金が舞い込むなどのグダグダな話が申し訳程度に書いてある。これも公開する勇気は、ない。
行動の逐一を すべて記録すると こうなる
起床6時、早い!目覚まし時計に助けられた。急かすように煙草を吸い、歯を磨き、顔を洗う。コインシャワーに行く。1号機はシャワーの取っ手を引っ掛ける金具が脱落。2号機は修理中の張り紙がしてある。一番奥の5号機を初めて使う。水の出、悪し。
帰ってきてすぐメシの支度をする。納豆がなかったのでオカズはシャケのみ。ゴハンも心なし少なめ。メシを食い終わり早く出掛けたかったが、そこで便意を催す。糞たれて、出発は7時20分 予定より5分遅い。
中野駅から7時38分の中央線下りに乗る算段だったが2分早い電車に乗れそうなので急いで乗ってしまう。下りの電車だがラッシュ時なので それなりに混み合っている。学生が多い。そんな中、20分程立ち続け、武蔵小金井に到着。
すぐ南口6のバス停を目指す。バス停に差しかかると、正に今、バスが発車しようとしてた為、走って飛び乗る。バスはけっこう揺れ、つり皮なしでは立っていられない。
府中試験場に着く。まだ開門前なので建物と平行して長蛇の列が出きていた。列の終わりも見えないので、どんどん歩いて行く。敷地の東端にぶつかろうかというあたりで列の切れ目が見つかり、この行列に加わることが出来た。間もなく開門となり、行列がのろのろと動き始める。
建物の中に入ると正面の警察官が、大声で免許更新の手順について説明していた。そしてどんどん更新の窓口へ誘導しようとするのだが、俺は免許を取りに来たのだ。
さて試験の申請書はどこに置いてあるのか? 正面玄関の左手に書記台らしき物があったので行ってみたが申請書は置いてない。そこから更に左の方向に視力検査室への入口が4つほどあり、既に人がいっぱい並んでいたが、皆、手に手に申請書を持っている。
近くに婦人警官がおり、若い女性の質問に答えていた。手に何か持っている。婦人警官に近づき尋ねると、何の試験を受けるのか訊かれたので、原付である旨を告げると申請用紙を手づから呉れた。
これが正しい入手ルートなのかは知らぬ。そう言えば試験場の一つ前の停留所が「試験場代書前」という名前だった。そこで入手するものなのであろうか?
申請書になんとか記入を済ませ、用意した写真を貼る。貼る所は接着剤が塗布してあるシールを剥がすだけなのでノリはいらない。出来上がった申請書を持って視力検査室の前の行列に加わり、順番を待っていたのだが、裏面にも記入する所があることに気付く。健康チェックの項目である。列を離れ書記台に戻って記入し、また一番後ろの列に加わる。あと一人で自分の番となる。気が急いていたのか、もう少し後ろに下がるように検査の女性係官に注意される。
いよいよ自分の番となる。Cの字の向きと出てきた色を答えるだけなのだが、検査機を覗き込むとタテ方向に赤と黄のランプが点灯しているのが見える。「アカ」と答え黙ってしまう。下の色は何なのかは問われず、やり直しを命ぜられる。次は赤と青が出たので「アカ・アオ」と答えたところ合格になった。
検査室の外で机だけ出して座っている係官の所へ行き、合格印を押してもらう。すぐに受験料を払うように指示される。料金窓口へ行って1650円払う。今度は 35番窓口に行って申請書を提出するように言われる。
行って係官に申請書と住民票を提出したが、申請書の書き方に不備があり 今回、自動車も含めて受験が初めてであることを告げると、色々と直してくれる。代書屋が はやる訳だ。親切に直してくれた係官に感謝。
受験票を受け取り記載された部屋に入室して待っているように言われる。受験票には「第一試験場」とある。目指す試験場を探し当てて入室する。ホッと一息と言いたい所だが、実はまだ何も始まっていない。